大判例

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名古屋高等裁判所 昭和26年(ネ)115号 判決

控訴代理人は原判決を取消す。被控訴人の請求を棄却する。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とするとの判決を求め、被控訴代理人は控訴棄却の判決を求めた。

当事者双方のした事実上の陳述は、控訴代理人において、「被控訴人は昭和二十年十一月二十三日現在三重県名賀郡名張町に居住しており、同県阿山郡友生村所在の本件農地は自作農創設特別措置法第三条第一項第一号に該当するものであつたので、友生村農地委員会は、昭和二十四年二月十三日その買収計画を樹てたところ、被控訴人は、同月二十二日これに対して異議を申立て、右委員会は同年三月一日審議の上異議の申立を理由なしと認めて却下する旨決議し、同委員会長矢口春山は同月三日友生村役場内の同委員会事務所において、被控訴人に対し、口頭を以てその旨通達したのであるが、被控訴人はこれに対して訴願を提起しなかつたので控訴人は右農地を買収したものである。仮りに右委員会が被控訴人に対して異議申立却下の決議あつた旨を通告しなかつたとしても控訴人の買収処分は有効である。すなわち、これがため被控訴人が訴願提起の期間を徒過したとしても、これは異議却下の通告がなされなかつたことにより適法化されるであろうし、又行政事件訴訟特例法第二条による正当の事由があれば、訴願の裁決を経ないで訴訟を提起することができるのであるから、被控訴人は不服申立の機会を失つたことにはならないからである。」と述べ、被控訴代理人において「本件無効確認訴訟には、右特例法第二条による訴願前置及び同法第五条による出訴期間についての各規定は適用されないから、本訴は適法に提起されたものである。又被控訴人が不在地主であるとの控訴人の主張はこれを争う」と述べたほかは、いずれも、原判決の事実摘示と同一であるから、これをここに引用する。(なお被控訴代理人は、原審判決書添付目録記載の三重県阿山郡友生村大字界外字森田八百二十三番地の一宅地五坪については、控訴人の買収処分が取消されたから、この部分については訴を取下げる。従つて右目録に計十四筆とあるは、計十三筆となると述べ、控訴代理人は右訴の一部取下に同意した。)(証拠省略)

三、理  由

被控訴人主張の原審判決書添付目録記載の土地のうち、宅地五坪を除く以外の農地十三筆につき、三重県阿山郡友生村農地委員会が自作農創設特別措置法にもとづき昭和二十四年二月十三日その買収計画を樹ててその旨を公告し、被控訴人がこれに対して同月二十二日異議の申立をしたこと及び控訴人が同年三月一日付買収令書により右農地の買収処分をしたことは当事者間に争のないところである。よつてまず、本訴がいわゆる出訴期間を経過した後に提起された不適法のものであるかどうかを考察するに、行政事件訴訟特例法第五条及び自作農創設特別措置法第四十七条の二の出訴期間の規定は行政庁の違法処分の取消又は変更を求める訴訟のみに適用されるべきものであつて、本件のような行政処分の無効確認を求める訴訟にはその適用のないものであることは無効の行為が出訴期間という如きものの経過によつて有効となるの理なきことによつて明らかであるから、被控訴人の本訴提起が右規定による出訴期間経過後になされたものであると否とを問わず、その提訴は適法であり、又右特例法第二条のいわゆる訴願前置の規定も亦右と同様適用はないものである。従つてこれを不適法だとする控訴人の主張はその理由がない。つぎに、控訴人の本件農地買収処分は、右農地委員会がその買収計画に対する被控訴人の異議申立につき何等決定をしないのに、なされたものであるかどうかを考察するに、当審証人矢口春山、原審証人矢口春山(第一回)同清水泰夫(第一回)の各証言及び当事者間成立に争なく且右各証言によつてその記載内容の真実であることを認め得る甲第九号証を綜合すると、右農地委員会においては、同年三月一日被控訴人の前示本件農地買収計画に対する異議の申立につき審議し、これを理由なしとして却下する旨の決議をしたこと及び右決議の結果はこれを議事録に記載したのみで、別に決定書を作成することなく従つて決定書の謄本を被控訴人に送付しなかつたことが認められる。しかるに、自作農創設特別措置法施行規則第四条第一項によると右の如き異議の申立に対する決定は遅滞なく決定書の謄本を申立人に送付しなければならないのであり、又その決定は行政処分としての性質上申立人に対して決定書の謄本を送付することによつてその効力を生ずるものと謂わなければならないから、たとえ被控訴人主張のように、同年三月三日頃右農地委員会長矢口春山が口頭を以てその決議の結果を被控訴人に通達したことがあるとしても、これを以て決定書の謄本の送付があつたものとすることのできないことは勿論であるから、右農地委員会の異議申立に対する決定はいまだその効力を生じないものであり、換言すれば、右農地委員会は自作農創設特別措置法第七条第三項所定の決定をしていないことに帰するのである。さすれば、右農地の買収については、同法所定の爾後の手続を進めることができないのであり、従つてその買収処分は同法第八条第九条の規定に照らして許されないものであることきわめて明白であると謂うべきである。しかるに控訴人はあえてその買収処分に及んだものであるから、重大な瑕疵あるものであつて当然無効のものと解するを相当とする。控訴人爾後の主張は右認定を左右すべきものではない。すると本件農地買収処分の無効確認を求める被控訴人の請求は正当であつてこれを認容した原判決は相当であるから、控訴人の控訴は理由がない。

よつて民事訴訟法第三百八十四条によつて本件控訴を棄却すべきものとし、訴訟費用の負担については同法第九十五条第八十九条を適用し、主文のように判決した。

(裁判官 中島奨 長尾信 白木伸)

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